ベトナム人介護職の来日前準備|特定技能・日本語・仕事内容・生活チェック
最終更新: 2026年6月
日本で介護職として働きたいベトナム人にとって、来日前の準備は「試験に合格すること」だけではありません。介護の仕事は、人の体に触れ、生活を支え、事故を防ぐ責任のある仕事です。日本語、仕事内容、在留資格、雇用契約、住まい、生活費、相談先まで、来日前に理解しておくほど日本でのスタートが安定します。
この記事では、ベトナムから日本へ来て介護職を目指す人向けに、来日前に確認したいポイントを実務的にまとめます。特に、特定技能1号「介護」で来日する人、介護分野の技能実習から次のキャリアを考えている人、日本語学校や留学後に介護の仕事を目指す人に役立つ内容です。
制度や試験の詳細は変更されることがあります。応募前、契約前、在留資格申請前には、必ず出入国在留管理庁、厚生労働省、試験実施機関、勤務先、登録支援機関などの最新情報も確認してください。
まず知っておきたい結論
- 介護は日本で需要が大きい仕事ですが、体力・日本語・責任感が必要です。
- 外国人が介護分野で働く主なルートには、特定技能、技能実習、在留資格「介護」、EPAなどがあります。
- 特定技能1号「介護」では、原則として介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語試験の確認が重要です。
- ベトナムから特定技能で来日する場合、ベトナム側の送出手続きが関係することがあります。
- 給与だけでなく、夜勤、残業、寮費、控除、勤務地、支援内容、退職時のルールまで確認しましょう。
- 介護の日本語は日常会話だけでは足りません。利用者の状態、事故、服薬、排泄、食事、入浴などの言葉を覚える必要があります。
- 困ったときの相談先を来日前から決めておくことが大切です。
日本の介護職はどんな仕事をする?
介護の仕事は、高齢者や障害のある人が安全に生活できるように支える仕事です。日本では、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、病院併設の介護施設など、さまざまな職場があります。
仕事内容は施設や本人の経験によって変わりますが、来日前に知っておきたい代表的な業務は次のとおりです。
| 業務 | 内容 | 来日前に理解したいこと |
|---|---|---|
| 食事介助 | 食事の準備、食べるペースの確認、誤嚥予防 | むせる、飲み込む、姿勢、アレルギーなどの日本語が必要 |
| 入浴介助 | 浴室への移動、洗身、着替え、転倒予防 | 利用者の体に触れる仕事であり、安全確認が重要 |
| 排泄介助 | トイレ誘導、おむつ交換、清潔保持 | 恥ずかしさや尊厳に配慮する必要がある |
| 移乗・移動介助 | ベッド、車いす、椅子への移動を支える | 腰を痛めない体の使い方と声かけが大切 |
| 見守り | 転倒、体調変化、事故を防ぐ | 小さな変化に気づき、職員へ報告する力が必要 |
| 記録・申し送り | 食事量、排泄、体調、事故、対応内容を記録 | 読み書きの日本語が必要になりやすい |
介護職は「やさしい気持ち」だけで続けられる仕事ではありません。利用者の安全を守るため、決められた手順を守ること、分からないことをすぐ確認すること、報告・連絡・相談をすることが求められます。一方で、日本語力と経験を積むことで、介護福祉士、リーダー、教育担当、通訳・生活支援に近い役割など、長期的なキャリアにもつながりやすい仕事です。
介護で働く主な在留資格・ルート
厚生労働省は、外国人介護人材の受入れの仕組みとして、EPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能の4制度を案内しています。どのルートで来日するかによって、必要な試験、働ける期間、将来のキャリア、家族帯同の可否などが変わります。
| ルート | 向いている人 | 来日前に確認したいこと |
|---|---|---|
| 特定技能1号「介護」 | 介護分野で働くための試験・日本語要件を満たし、日本の施設で働きたい人 | 試験、雇用契約、支援計画、ベトナム側手続き |
| 技能実習「介護」 | 技能移転の制度として介護現場で実習する人 | 制度の目的、監理団体、実習計画、転籍の制限 |
| 在留資格「介護」 | 日本の介護福祉士資格を取得し、介護職として長く働きたい人 | 介護福祉士資格、養成施設、国家試験、学費 |
| EPA | 国の枠組みに基づいて介護福祉士候補者として来日する人 | 対象国、受入れ枠、学習支援、国家試験 |
ベトナム人が来日前に検討しやすいのは、特定技能1号「介護」や技能実習からの移行です。ただし、人によって最適なルートは違います。すでに技能実習を終えた人、日本語学校に通っている人、介護福祉士を目指す人では、必要な手続きが変わるため、自分の経歴を整理してから判断しましょう。
特定技能1号「介護」で来日前に確認すること
特定技能1号「介護」は、介護分野で一定の技能と日本語力を持つ外国人が、日本の介護施設などで働くための在留資格です。厚生労働省の案内では、原則として、介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語試験の確認が必要です。日本語試験は、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上が目安になります。
ただし、すでに介護職種の技能実習2号を良好に修了した人などは、試験の扱いが変わる場合があります。介護以外の職種で技能実習2号を終えた人も、日本語試験の扱いが異なることがあります。自分が免除対象かどうかは、必ず勤務先、登録支援機関、行政書士、出入国在留管理庁などに確認してください。
試験準備で意識したいこと
- 介護技能評価試験は、介護の基本、身体のしくみ、認知症、コミュニケーション、安全衛生などを広く確認します。
- 介護日本語評価試験は、介護現場で使う日本語を理解できるかが重要です。
- 日本語能力試験N4に合格していても、介護現場の言葉を別に勉強する必要があります。
- ベトナム語の説明だけで覚えるのではなく、日本語の指示、記録、申し送りの表現に慣れておきましょう。
2026年4月1日以降に実施される介護技能評価試験と介護日本語評価試験は、受験料の改定が案内されています。申込み日ではなく受験日に応じて価格が適用されるため、受験時期と費用も確認しておきましょう。
ベトナム人が特に確認したい送出手続き
ベトナムから新たに特定技能外国人として日本へ来る場合、ベトナム側の手続きが関係します。出入国在留管理庁のベトナムに関する案内では、ベトナムにいる人を新たに特定技能外国人として受け入れる場合、送出機関がベトナム内務省海外労働管理局において手続きを行うことが案内されています。
ここで大切なのは、「日本の会社が内定を出したからすぐ来日できる」と考えないことです。雇用契約、在留資格認定証明書、ビザ、ベトナム側の手続き、航空券、住まいの準備など、複数の段階があります。仲介者や紹介者から説明を受ける場合も、費用、返金条件、契約書、送出機関の情報を必ず確認してください。
高すぎる手数料、内容が分からない借金、パスポートや重要書類を長く預けるよう求める説明、契約書を見せない紹介は注意が必要です。不安がある場合は、ベトナム側の公的窓口、日本の受入れ会社、登録支援機関、出入国在留管理庁の情報を確認しましょう。
雇用契約で必ず見るポイント
来日前に最も大切なのは、雇用契約を理解することです。給与が高く見えても、寮費、光熱費、社会保険料、税金、食費、通勤費、控除を引いた後の手取りが少なくなることがあります。契約内容は、日本語だけでなく、自分が理解できる言語で説明を受けることが重要です。
| 確認項目 | 見るべき内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 基本給 | 月給か時給か、最低保証はあるか | 手取りではなく総支給額で説明されることが多い |
| 夜勤 | 夜勤の有無、回数、夜勤手当 | 介護施設では夜勤がある場合がある |
| 残業 | 残業の有無、残業代の計算方法 | 固定残業代がある場合は範囲を確認 |
| 休日 | 週休、シフト、年次有給休暇 | 土日休みとは限らない |
| 寮・住まい | 家賃、初期費用、家具、同居人数、通勤時間 | 給与から引かれる金額を確認 |
| 控除 | 社会保険、税金、寮費、光熱費、食費 | 毎月いくら引かれるかを具体的に聞く |
| 支援内容 | 空港送迎、役所手続き、銀行、携帯、相談対応 | 特定技能1号では支援計画の確認が重要 |
| 退職・転職 | 退職時のルール、違約金の有無 | 不当に高い違約金や罰金は注意 |
契約書や説明資料は、スマートフォンの写真だけでなく、PDFや紙でも保存しておきましょう。後でトラブルになったとき、契約内容を確認できることが重要です。
来日前に勉強したい介護の日本語
介護では、利用者の命や安全に関わる日本語を使います。日常会話ができても、介護現場の言葉を知らないと、事故や誤解につながる可能性があります。来日前から、次のような言葉を重点的に覚えておくと役立ちます。
| 分野 | 覚えたい日本語 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 体調 | 熱、痛み、めまい、吐き気、息苦しい、顔色 | 利用者の変化を報告する |
| 食事 | むせる、飲み込む、食事量、水分量、アレルギー | 食事介助、記録、申し送り |
| 排泄 | 尿、便、下痢、便秘、失禁、おむつ交換 | 排泄介助、健康確認 |
| 移動 | 立つ、座る、移る、車いす、転倒、ふらつき | 移乗介助、事故予防 |
| 認知症 | 不安、混乱、徘徊、物忘れ、声かけ | 認知症の利用者への対応 |
| 報告 | いつ、どこで、誰が、どうした、確認しました | 職員への報告、記録 |
日本の介護現場では、利用者に対して丁寧な言葉を使います。「早くしてください」ではなく「ゆっくりで大丈夫です」「こちらに座りましょう」など、相手を安心させる表現が大切です。強い言い方や命令に聞こえる表現は、トラブルの原因になることがあります。
体力・メンタル面の準備
介護職は、長時間立つ、利用者の体を支える、夜勤をする、シフト勤務をするなど、体への負担がある仕事です。腰痛や睡眠不足を防ぐため、来日前から体調管理を意識しましょう。特に、移乗介助では力だけでなく、正しい姿勢と手順が重要です。
また、介護現場では、利用者から強い言葉を言われる、認知症の人への対応に迷う、亡くなる人に関わる、家族対応で緊張するなど、気持ちの負担もあります。一人で抱え込まず、先輩職員、生活支援担当、登録支援機関、相談窓口に話す準備をしておきましょう。
持ち物・生活準備チェックリスト
日本に来てすぐは、役所手続き、銀行口座、携帯電話、住まい、通勤、職場研修などで忙しくなります。来日前に必要な書類や生活用品を整理しておくと、到着後の不安を減らせます。
| 準備するもの | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 書類 | パスポート、ビザ、在留資格認定証明書、雇用契約書、試験合格証明、健康診断書 | コピーとデータ保存を用意する |
| 連絡先 | 会社、登録支援機関、寮、家族、送出機関 | 電話番号、メール、住所を紙でも持つ |
| お金 | 到着後1か月程度の生活費 | 給与支給日までの食費・交通費を考える |
| 服・靴 | 仕事用の動きやすい服、滑りにくい靴 | 施設指定の制服があるか確認 |
| 薬・健康 | 常用薬、診断書、アレルギー情報 | 日本で同じ薬がすぐ買えない場合がある |
| スマートフォン | 翻訳アプリ、地図、連絡アプリ、二段階認証 | 日本で使えるSIMや端末か確認 |
| 学習用品 | 介護日本語の教材、ノート、単語帳 | 到着後も毎日少しずつ勉強する |
来日前に会社へ質問しておきたいこと
よい会社かどうかは、給与だけでは分かりません。来日前に質問したとき、分かりやすく説明してくれるか、契約書と同じ内容を答えてくれるか、生活面の支援を具体的に説明できるかを見ましょう。
- 勤務先はどの種類の施設ですか。特別養護老人ホーム、老人保健施設、有料老人ホーム、デイサービスなど、どこですか。
- 夜勤はいつから始まりますか。月に何回くらいありますか。夜勤手当はいくらですか。
- 入社後の研修は何日ありますか。ベトナム語ややさしい日本語の資料はありますか。
- 仕事で分からないことを誰に相談できますか。教育担当者はいますか。
- 寮は一人部屋ですか。相部屋ですか。家賃、光熱費、家具、Wi-Fi、通勤時間はいくらですか。
- 給与から毎月引かれるお金は何ですか。手取りの目安はいくらですか。
- 日本語学習や介護福祉士を目指す支援はありますか。
- 体調不良、ハラスメント、給料トラブル、寮の問題がある場合、どこに相談できますか。
来日前に避けたい失敗
介護職で来日する人が困りやすいのは、仕事そのものよりも、来日前の情報不足です。次のような状態で契約すると、来日後に「聞いていた話と違う」と感じやすくなります。
- 手取り額を確認せず、総支給額だけで判断する。
- 夜勤やシフト勤務があることを理解していない。
- 寮費、光熱費、食費、通勤費を確認していない。
- 介護の仕事に排泄介助や入浴介助が含まれることを知らない。
- 日本語N4だけで十分だと思い、介護日本語を勉強していない。
- 仲介者に言われた費用の内訳を確認していない。
- 相談先を会社だけにしてしまい、外部の相談窓口を知らない。
介護の仕事は、準備をすれば長く続けやすい仕事です。しかし、仕事内容や生活費を理解しないまま来日すると、早い段階で不安が大きくなります。契約前に質問することは悪いことではありません。むしろ、自分の生活とキャリアを守るために必要な行動です。
来日後14日以内に意識したいこと
来日後は、在留カード、住民登録、健康保険、年金、銀行口座、携帯電話、通勤経路、職場研修など、短期間で多くの手続きがあります。会社や登録支援機関のサポートを受けながら進めることが多いですが、自分でも何をしているのか理解しておきましょう。
特に、住所、在留カード、健康保険証、銀行口座、給与振込、寮のルール、緊急連絡先は重要です。日本語が不安な場合は、説明を録音できるか確認する、資料を写真に残す、分からない言葉をメモするなど、後で確認できる形にしておくと安心です。
長く働くためのキャリアの考え方
介護職は、最初は覚えることが多く大変ですが、経験がキャリアにつながりやすい仕事です。日本語力を上げ、介護記録を書けるようになり、利用者対応や後輩指導ができるようになると、職場での評価も上がりやすくなります。
将来的に日本で長く働きたい場合は、介護福祉士を目指す道もあります。在留資格「介護」や長期的なキャリアにつながる可能性があるため、勤務先に学習支援、受験支援、勤務シフトの配慮、教材費補助があるかを確認しておくとよいでしょう。
関連するケース記事
参考情報
- 厚生労働省:外国人介護人材の受入れについて
- 厚生労働省:介護分野における特定技能外国人の受入れについて
- 厚生労働省:介護技能評価試験及び介護日本語評価試験の受験料改定について
- 出入国在留管理庁:ベトナムに関する情報
- 出入国在留管理庁:生活・就労ガイドブック
- JICWELS:介護分野の特定技能1号について
この記事は、来日前に確認すべき一般的な情報をまとめたものです。個別の在留資格申請、雇用契約、送出手続き、試験免除の判断は、本人の経歴や勤務先によって変わります。実際の手続きでは、必ず最新の公式情報と勤務先・支援機関の説明を確認してください。
